ながいぜ | ネタ?日記

ながいぜ

「あれっ?しょうにゃんネックレス買ったの?」

「ん?ああ。」


春の暖かさをかもし出す日差しと、冬に戻らんとするかのように吹き荒れる風。

まるで北風と太陽。吹き付ける風はスーツを通り抜けて僕を身震いさせたし、照りつける日差しは暖かなぬくもりで僕を包んだ。そろそろ北風は参ってしまって、やさしいお日様が空を占有するのだろう。

スーツは、まことに着心地が悪い。

「スーツは男をあげる」と、先輩が言っていたのだが、なんだか僕が着ると顔が大きく見える。この世界を書いている漫画家がいるのだとすれば、絶対パースが狂っている。ってくらいアンバランス。どうでもいいが。

どうしてそうなるのかといえば、体にジャストフィットなスーツを買ったがためであり、そもそもの原因は僕にあるといっても過言ではないのだが、「どうしたおまえ首ねえぞ」なんて言われりゃさすがにむっと来るのだ。

何故唐突にスーツの話が?

僕は大学祭の事務局で協賛の仕事をしている。その手始めとして、広告取りの仕事を任された。企業に電話して大学祭のパンフレットに広告を載せませんかと聞き、掲載料という形で資金援助をしてもらうというそういう仕事。

企業の対応がそれはもう様々で、企業って言うか僕が任されたのは居酒屋の類なんですけど、怒られたり、怒鳴られたり、ののしられたり、かと思えば「うちもう潰れるのぉ!」なんてあっけらかんと答える店もあり、なかなかにおもしろい。

そして、好意的な返事をいただいたときに、実際に店舗を訪れ、詳しい話を説明したりするのだが、そのときの服装が基本的にスーツなのだ。

スーツを着こなし、男を上げた僕は「顔でか」というペナルティにもめげずに契約店舗へ!………いくまでに時間があったのでコンビニで立ち読みしてた。

読みたい雑誌がなくなると、今度は食料選びだ。セブンイレブンのパンコーナーをなめるように見回す。

大丈夫。「5時から営業」って言ってたからまだまだ時間はある。

甘いパンと甘くないパンの狭間で揺れ動いていると、なにやら騒がしい女の声が。うざいなぁと思いつつ、無視していると、そいつはパン売り場のところまでやってきた。…どうやら男と一緒らしい。

女はひとしきりべらべらとしゃべった後、「あれっ?しょうにゃんネックレス買ったの?」

いや、別にいいんですけどね。でもさ、しょうにゃんって。しょうにゃんってお前。それでいいのかしょうにゃん。公衆の面前でにゃん呼ばわりのしょうにゃん。

「ん?ああ」

普通に受け答え。いつも「しょうにゃん」確定。

「へえええ。かっこいーねっ」

「そう?安もんだけどね。」

「うっそぉー。高いんじゃないのー?」

「105円だよ」

「・・・」

消費税までちゃんと込みで値段を言うしょうにゃんに感動した。

105円という衝撃の告白を受けた女の人、少々絶句してからネックレスをよく見て…

「センスいーからしょうにゃん好きっ」

なんていいながら抱きついてるよおいいいのかしょうにゃん公衆の面前でてめえら調子に乗ってんじゃねえぞ今まだ4時じゃねえか働けコラこのニートどもが媚び媚びオーラ出してんじゃねえぞ餓鬼が去ね!ここからすぐに去ね!そして二度と戻ってくるなここはアウェイだぞ今このコンビニにお前らの見方は誰もいねえぞ消えろおおおおおお!!


心の中で毒づき、しょうにゃんをみる。


すげえ迷惑そうな顔してんのな。


やっぱりそうだよね。そうですよね。しょうにゃんは普通の人だ。よかったよかった。がんばれしょうにゃん。媚び女にまけるなしょうにゃん。


ちょっといい気分で5時に店舗に顔を出す。いろんな雑談を交えての攻防。何とかして契約してもらいさあ帰るぞと腰を上げるとオヤジが一言。

「5時営業つってんだから営業時間前に来ないとだめだぞぅ」

わぁつめがあまかった。しょうにゃんその他一名に心の中で突っ込みしてる場合じゃなかった。以後気をつけますぅ。